ORIGINAL AUTHOR | 『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』

BASED ON A COMIC BY GO NAGAI

1945年石川県輪島市生まれ。67年に「目明しポリ吉」でデビュー以降、「マジンガーZ」シリーズ「デビルマン」「ハレンチ学園」など国民的コンテンツを生み出した伝説の漫画家。少年漫画の世界に性やバイオレンスの表現を取り入れ、その後の漫画界に多大なる影響を与える。五つの週刊誌(少年ジャンプ、少年マガジン、少年サンデー、少年チャンピオン、少年キング)に同時に連載経験を持つ漫画家である。日本のみならず世界中に多くのファンを持つ。

WORKS

INTERVIEWインタビュアー:藤津亮太

少年時代からの願望が凝縮した作品

―『マジンガーZ』は後のロボットアニメに大きな影響を与えています。

永井

子供の頃から、手塚治虫先生の『鉄腕アトム』、横山光輝先生の『鉄人28号』といったロボット漫画を読んで育ちました。自分もいつかロボット漫画を描きたいと思っていたんですけれど、新しいコンセプトが思いつかない限りは真似になってしまうので、真似にならないコンセプトをずっと探していました。そして、ようやく「乗り込んで操縦する」というコンセプトを思いついたので、描いたのが『マジンガーZ』なんです。ただ、その後、いろんなロボットが乗り込み型になってしまって、真似されたくはなかったんですけどね。僕は、真似にならないために、長い間、ロボット漫画を描かないで我慢してきたわけですから。

―作中でマジンガーZを評した「神にも悪魔にもなれる力」という表現は、『マジンガーZ/INFINITY』にも受け継がれています。

永井

マジンガーZは究極的に強いロボットにしたかったんです。つまりとんでもない兵器なわけで、それを少年である兜甲児に託す以上、究極の結果がどうなるかを考えて行動してほしい。そういう思いを込めたセリフなんです。『マジンガーZ』を描く前に『魔王ダンテ』や『デビルマン』を描いていましたから、そういう影響もあったと思います。とても自然に出てきたフレーズでした。

―兜甲児というキャラクターはどのように生まれたのでしょうか。

永井

性格的には、子供が憧れて、親御さんからは怒られるような、そういう部分をたくさん入れたいと思いました。『ハレンチ学園』の登場人物、山岸八十八の路線で、ヤンチャで遠慮のない性格を受け継ぎつつ、それにかっこよさと強さを備えさせたのが兜甲児です。ヤンチャで熱血で、でも純情で、弓さやかに乱暴なことを言っても、悲しそうな顔をされると、シュンとしちゃうようなね。そういう定番のヤンチャ坊主を思いっきり描きたいと考えました。

―連載・放送が始まった『マジンガーZ』は、瞬く間に大ヒット作となりました。

永井

マジンガーZにいろんな能力を持たせた理由のひとつに、子供が皆よい体格をして、腕っ節が強いわけではない、ということがありました。そういう弱い子供たちをどうやって巻き込めるかを考えていたので、「ロケットパンチだったら遠くの相手もやっつけられると思ってくれるのでは?」といった発想が出てきたんです。ヒットしたのはそういう部分も大きかったと思います。『マジンガーZ』の連載は、大人気だった『ハレンチ学園』を無理やり止めて始めたんです。だから最初のうちは編集からの抵抗は大きかったです。だから『マジンガーZ』がヒットして、一番安心したのは僕でした。

―今回、東映アニメーションから改めて『マジンガーZ』を制作したいという依頼があった時は、どんなお気持ちでしたか。

永井

嬉しかったですね。途中、別の制作会社で作られた“マジンガーもの”もありましたが、やはり『マジンガーZ』といえば東映アニメーションというイメージが強いですからね。ずっと、東映アニメーションに作ってほしいという気持ちはあったんです。だから「やっと来てくれたか」と。「もうちょっと早く来てよ」という気持ちでした(笑)。

―永井先生から、今回の企画について何か注文を出されましたか?

永井

最初に簡単な企画案を出しました。ただ、それは「これを作ってほしい」ということではなく、「ここまでやっても構わないよ」「こんなことをやってもいいよ」というつもりで書いたものです。かつてのファンもいるし、逆にまったく『マジンガーZ』を知らない世代もいる今、それを踏まえて新しい『マジンガーZ』を作ることが大事なことで、あまり過去の『マジンガーZ』に縛られても小さくなってしまう。企画案を通じてそこのところだけお伝えして、あとはスタッフの方におまかせしました。昔もそうだったんですが、そうやってお任せしたら後は一切口出しをしません。作り手の一人ひとりが、のって作らないと面白いものが出来上がりませんから。(注:ゴラーゴンは、この時の永井案に出てきた呼称を使っている)

―完成した『マジンガーZ/INFINITY』はいがかでしたか。

永井

面白かったですね。エキサイトしました。作り手の皆さんもファンだった方が多いらしくて、「面白くするぞ!」というエネルギーに満ちていた気がしますね。それが全部作品に乗り移ってるなっていう印象でした。特に、バトルシーンはCGがふんだんに使われていて、迫力が半端なかったですね。画面を見てるだけで楽しいという感じでした。

―永井先生にとって『マジンガーZ』とはどんな存在でしょう。

永井

少年時代から強いロボットを作りたいと思い続けていた、その思いを凝縮した、願望の塊のような存在です。少年時代の思いを忘れなかったから『マジンガーZ』を生み出すことができたと思います。